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43話 カードに刻まれた運命

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-11-03 06:00:50

 そもそも、前衛だって俺がやる自信あるし。というか、下手にAやBランクの大人が入ってきたら絶対仕切り始めるじゃん。自由がなくなって、さらに面倒くさいのはごめんだって。

 女の子たちが、ギルマスの提案に不安そうに俺を見てくる。そらの背中に、彼女たちの助けを求める視線が突き刺さった。

「……遠慮しておきます。とりあえず今日は、登録だけお願いします」

 そらは、女の子たちを安心させるように、きっぱりと断った。彼の声には、パーティの編成を他人に委ねるつもりはないという強い意志が感じられた。

「そうか。まぁ、ギルドカードはもうできてるはずだ。パーティの登録もな」

 ギルマスが諦めたように頷き、受付嬢に目を向ける。彼女はすでに用意していたようで、小走りで俺たちに歩み寄ってきた。

「こちらです」

 受付嬢が四枚のカードを差し出す。そらは、その真新しいギルドカードをしっかりと受け取った。手のひらに伝わるカードの感触が、これから始まるハンターとしての生活を予感させた。

 ――はっ!? ……Sランクって書いてあるんだけど!?

 そらの視線は、自分のギルドカードの隅に記された文字に釘付けになった。

 さっきAランク確定とか言ってなかったっ!?

 彼は内心で驚愕に目を見開いた。特大の判定石を破壊した結果、ギルド側が勝手に最高位のランクを付けてしまったらしい。

 ちょ、待っ――まあ、使うことも見せることもないし……ま、いっか。

 そらは、すぐに面倒事を避けるための最良の選択を導き出した。このランクが公になることは避けたいが、この場で抗議して騒ぎを大きくするのは得策ではない。

 女の子たち、嬉しそうに笑ってるし。

 エル、ステフ、ブロッサムは、手にしたカードを見て満面の笑みを浮かべ、声を揃えて感謝を伝えてきた。

「「「ありがとうございます!!」」」

 その純粋な喜びの表情を見て、そらの心に浮かんだのは複雑な諦めと、わずかな安堵だった。

 ……まぁ、うん、よかったのかな。

「では、今日は帰ります」

 そらは、手に入れたばかりのギルドカードをしまいながら、ギルマスに告げた。

 ギルマスが怪訝な表情で問いかけてくる。

「この町に住んでるわけじゃないんだろ? 見たことない顔だし。宿屋か? 明日、受付嬢に迎えに行かせるぞ?」

「いえ、大丈夫です。近くの小さな村から来てるだけなので。時間がある時にまた来ます」

 そらは、詳細を誤魔化すように、曖昧な返事をした。

「……ああ、わかった。それで問題ない」

 ギルマスは、何かを察したように深く追求することはせず、静かに頷いた。

「それじゃ、有り難うございました」

 ギルドの応接室の扉を開けると、ギルドの中のざわめきがまた耳に届いてきた。彼らの一挙手一投足に注がれる、熱を帯びた視線も感じた。そらは、その空気に居心地の悪さを覚えながら、そのまま足早に外へ出る。

 新鮮な外の空気を吸い込み、そらは深い溜息をついた。

 ――はぁ、疲れたぁ……。やっぱり、こういうのって面倒い。

 彼は、予想外の騒動と、Sランクという重い肩書きを背負わされたことへの精神的な疲労を覚えた。

「次は――服屋だ!」

 そらがそう宣言した瞬間、ブロッサムとエルの目がキラッキラに輝いた。彼女たちの瞳には、新しい服を選ぶことへの純粋な期待と喜びが満ちていた。

「好きなのを買っていいよ。パジャマも下着もね。あと、アリアとノアの分も忘れないでね!」

 そらの言葉に、二人は飛び跳ねるように喜んだ。

「やったー!ありがとう、そらくんっ!」

 エルは最高の笑顔を見せた。

「ありがとうございますわっ!」

 ブロッサムは、上品ながらも隠しきれない興奮を滲ませて礼を言った。

「……ありがと」

 ステフもまた、控えめに、しかし感謝の気持ちを込めてそらにお礼を言った。

 ふと振り返ると、ブロッサムが少し離れた棚の前で立ち止まっていた。彼女は、他の服には目もくれず、ある一着に意識を集中させているようだった。

 その小さな手には――少し高そうな、深みのある紫色のドレス。光沢のある上質な布地に、小さな宝石のような装飾が肩口に施されていて、全体に気品が漂う。子ども用でありながら、まるで小さな貴族が正装として着るような、優雅さを備えた一着だった。ドレスの布地は、触れれば滑らかでひんやりとしていそうな質感だ。

 ブロッサムはそれをそっと両手で抱え、ちらちらとこちらをうかがっている。口を開くでもなく、ただ遠慮がちに、それでも――どこか欲しそうに。その瞳には、憧れと諦めが入り混じった、複雑な感情が揺れていた。

「……どうしたの? そのドレスが欲しいの?」

 そらが優しい声で尋ねると、彼女は一瞬ビクッと肩を震わせ、すぐに目を伏せた。その仕草は、身分をわきまえている者特有の遠慮を示していた。

「……だ、だめですわよね。高そうで……わたしなんかには、もったいないですし……」

 その言葉に、そらの口元が自然とほころぶ。彼女の控えめな自己評価が、彼の心に温かい感情を呼び起こした。

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    「あ……うん。そうだね……」 そらが苦笑いしながら答えると、ブロッサムがジト目でじっとそらを見つめてくる。その視線は、一切の油断も許さないと訴えかけていた。(俺は誘ってないし、やましい心はないよ? 多分。自信なくなってきたけど……気にしたら負けだ。) そらはそう思いながらも、心の中で次なる計画を考える。(人数が増えたし、もっと大きいお風呂作らないとなぁ……。)彼の思考は、目の前の状況と、未来の生活環境の改善の間で揺れ動いていた。

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